身近な風景から、世界につながる
映画監督・作家・美術家として活動する伴田良輔。美術では「有月(UGETSU)」の名を使い、独自の版画や屏風、襖絵、立体作品などを手がけている。
京都・丹後の大江山の麓で育ち、現在は房総を制作の拠点としている。次々と里山が現れる房総の風景は、故郷にも通じるという。車で各地を巡りながら、映画につながる風景や人物を探す。その営みを、自ら「伴田ツーリズム」と呼ぶ。
遠くへ出かけなくても、すぐ隣で物語は生まれている。身近なものを見つめ、想像を深めていくことが、世界のどこかとつながる。その感覚が、伴田の制作を支えている。
映画と美術が響き合う場所
長柄町の倉庫アトリエには、映画にも登場する大型の屏風や襖絵、陶や鉄の作品が収められている。「Gallery R」には、初期の版画やオブジェ、有月名義のオリジナルの服などが並ぶ。
美術作品が映画の風景をつくり、映画で生まれたイメージが、また別の表現へとつながっていく。伴田にとって映画と美術は、長年の創作の蓄積から生まれ、互いに響き合う表現だ。
房総三部作と『赤い自転車』
長編映画『森へ island』『道 パッサカリア』は、海外の映画祭でも評価を受けてきた。続く『赤い自転車』は、房総三部作の3作目にあたる。
原案は、敬愛するチェコの作家カレル・チャペックの童話『郵便屋さんの話』。宛名も差出人もない手紙をめぐる物語を、昭和の日本に舞台を移して描く。
撮影の中心となったのは、大多喜町に残る元郵便局の建物。現在そこで花屋を営む河石良太郎を、伴田は初対面で主演に誘った。チャペックの挿絵の登場人物に似た、そのたたずまいが決め手だったという。日々の暮らしの中にいる人々や、出会った動物たちの存在も、映画の大切な一部となっている。
自然も主役になる映画
多くの人の支援を受け、撮影は2年にわたった。房総の四季を追いながら、セリフを抑え、音楽と静寂によって観客を物語へと導く。伴田が「自然も主役」と語るように、草木や生き物、光や風も、登場人物とともに画面をつくる。
妖精に見立てたパペットのストップモーションも、その世界を彩る。ファンタジーを通して、それぞれの土地に固有のものと、人間が国や文化を超えて共有するものを描こうとしている。
映画を観客へ届ける
上映の場には、東京・菊川の映画館「Stranger」や千葉市生涯学習センターなどがある。上映と監督・出演者のトークを組み合わせ、作品を観た人と、その背景や制作の思いを分かち合う機会も設けている。
若い頃から取り組んできたさまざまな表現が、今の映画づくりにつながっている。「今の仕事が楽しくてしょうがない」。その言葉に、創作を続ける伴田の現在が表れている。
出典:『シティライフ』2026/11 インタビュー原稿をもとに要約・再構成

