ファクトリーの建物を描いたスケッチ

UGETSU FACTORY

概要

アトリエと倉庫ギャラリー

2002年より房総に構えるアトリエ。版画、絵画、屏風、襖絵、衣装へと広がる制作活動の拠点です。

インタビュー記事

01

房総の里山から広がる映画とアート

シティライフ 2026/11

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身近な風景から、世界につながる

映画監督・作家・美術家として活動する伴田良輔。美術では「有月(UGETSU)」の名を使い、独自の版画や屏風、襖絵、立体作品などを手がけている。

京都・丹後の大江山の麓で育ち、現在は房総を制作の拠点としている。次々と里山が現れる房総の風景は、故郷にも通じるという。車で各地を巡りながら、映画につながる風景や人物を探す。その営みを、自ら「伴田ツーリズム」と呼ぶ。

遠くへ出かけなくても、すぐ隣で物語は生まれている。身近なものを見つめ、想像を深めていくことが、世界のどこかとつながる。その感覚が、伴田の制作を支えている。

映画と美術が響き合う場所

長柄町の倉庫アトリエには、映画にも登場する大型の屏風や襖絵、陶や鉄の作品が収められている。「Gallery R」には、初期の版画やオブジェ、有月名義のオリジナルの服などが並ぶ。

美術作品が映画の風景をつくり、映画で生まれたイメージが、また別の表現へとつながっていく。伴田にとって映画と美術は、長年の創作の蓄積から生まれ、互いに響き合う表現だ。

房総三部作と『赤い自転車』

長編映画『森へ island』『道 パッサカリア』は、海外の映画祭でも評価を受けてきた。続く『赤い自転車』は、房総三部作の3作目にあたる。

原案は、敬愛するチェコの作家カレル・チャペックの童話『郵便屋さんの話』。宛名も差出人もない手紙をめぐる物語を、昭和の日本に舞台を移して描く。

撮影の中心となったのは、大多喜町に残る元郵便局の建物。現在そこで花屋を営む河石良太郎を、伴田は初対面で主演に誘った。チャペックの挿絵の登場人物に似た、そのたたずまいが決め手だったという。日々の暮らしの中にいる人々や、出会った動物たちの存在も、映画の大切な一部となっている。

自然も主役になる映画

多くの人の支援を受け、撮影は2年にわたった。房総の四季を追いながら、セリフを抑え、音楽と静寂によって観客を物語へと導く。伴田が「自然も主役」と語るように、草木や生き物、光や風も、登場人物とともに画面をつくる。

妖精に見立てたパペットのストップモーションも、その世界を彩る。ファンタジーを通して、それぞれの土地に固有のものと、人間が国や文化を超えて共有するものを描こうとしている。

映画を観客へ届ける

上映の場には、東京・菊川の映画館「Stranger」や千葉市生涯学習センターなどがある。上映と監督・出演者のトークを組み合わせ、作品を観た人と、その背景や制作の思いを分かち合う機会も設けている。

若い頃から取り組んできたさまざまな表現が、今の映画づくりにつながっている。「今の仕事が楽しくてしょうがない」。その言葉に、創作を続ける伴田の現在が表れている。

出典:『シティライフ』2026/11 インタビュー原稿をもとに要約・再構成

02

映画とアートが響き合う場所

アートエディター 2026春

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長柄町の倉庫アトリエを拠点に、襖絵や屏風、キャンバス画、シルクスクリーン版画を制作してきた伴田良輔。その作品は映画の美術となり、映画のロケーションからは新たな絵が生まれる。伴田にとって、美術と映画は一つの視覚芸術としてつながり、互いに刺激を与えながら、次の表現へと広がっている。

2021年、文化庁の芸術家支援制度で制作した最初の映画『森へ island』が海外の映画祭で受賞したころから、倉庫アトリエには海外からも人が訪れるようになった。映画を通じて房総に興味を持ち、遠くから足を運んでくれる。訪問者は、映画に使われたセットや美術、オリジナルの衣装を間近に見て、スクリーンの中の世界と出会い直す。

房総には里山を中心に豊かな自然が残り、時間の堆積を感じさせる風景がある。伴田はそこを「映画的なロケーションの宝庫」と捉えている。日々の散策で目にする景色、出会う人々、森の動物や植物。その一つひとつが、作品や映画へとつながっていく。

3作目の長編映画『赤い自転車』では、大多喜に残る昭和の郵便局の建物を舞台として使用した。現在は花屋となっているこの場所に加え、薬草園蒸溜所mitosayaも制作に協力。そこで暮らす犬のムギも映画に登場する。身近な場所や日常の出会いが、映画の世界を形づくっている。

「人生は24時間ロケハン」。この言葉には、暮らしと創作が自然につながる伴田の姿勢が表れている。映画のために風景を探す時間だけでなく、何気なく歩くときも、目の前の光景が次の場面や作品のきっかけになる。

アトリエには、大型の屏風や襖絵、陶や鉄の作品などが置かれている。イギリスやシンガポールなどから訪れた人々を迎え、時間があれば、伴田自身が映画の舞台となった森や古代遺跡へ案内する。笠森観音、長柄の横穴式古墳、大多喜や夷隅。作品を生んだ土地をともに歩くことも、訪問者との交流になっている。

『赤い自転車』の制作を支えたクラウドファンディングは終了した。プロジェクトページには、作品の概要や出演者、制作の歩みが記録されている。房総の風景と人々から生まれた映画は、こうした多くの出会いと支えにも結ばれている。

作品に囲まれた倉庫アトリエと伴田良輔
LIFE AT THE FACTORY

ここで生まれる風景